プルースト『スワンの恋』を読む

仏検とディクテの試験も一段落したので、『星の王子さま』以来で久しぶりに小説のディクテを始めた。やっぱり小説を読まないと生活に潤いがなくなってしまう。

『失われた時をもとめて』の中の『スワンの恋』の抜粋。日本語でも読むのも大変だった物語を、フランス語で通読するなんてことは私には逆立ちしても無理だけれど、その一部、さらに抜粋ならば読めるかもしれない。『スワンの恋』は主人公がまだ生まれる前の話で、ここだけで恋愛物として楽しめる章だ。だから映画化もされている。

音声をiPhoneに入れて耳コピアプリでさっそく聴いてみる。……何を言ってるのかさっぱり分からない。アプリのスピードを落としてまた聴いてみる。……やっぱり分からない。速度を最低にしても聴き取れない。仕方ないので本を開く。あれ?単語も文法も難しくないじゃない。

考えてみたら、今までディクテしてきたのは『星の王子さま』含め、非ネイティヴ向けに録音された「教材」なのだ。だから発音も丁寧で明瞭だった。でもこの『スワンの恋』は、ネイティヴ向けの朗読CDなので、そんな心遣いは一切なし。たとえば一人称単数の主語je(私は)なんて、「ジュ」でも「シュ」でもなく、微かな吐息のような「ヒュ」なのだ。人物の台詞に至っては、朗読者が抑揚たっぷりに声色を作って感情を込めて読むのでさらに聞き取れない。

聴いているうちにだんだん慣れてきて、台詞じゃないところはそこそこ聴き取れるようになってきた。『星の王子さま』より短いけれど、読み終えるまでずっと時間がかかりそう。話は面白いので楽しめればいいや。好みでもなんでもなかったはずの女に恋い焦がれて苦しみもだえる男の物語。