寝かしつけプロレス

 息子1歳半、赤子以上人間未満。大変なことはそれはそれはたくさんあるけれど、なかでも寝かしつけに悪戦苦闘しています。先月断乳するまでは乳で寝落ちするのを待てば良かったのですが、これからは自力で寝てもらわねばなりません。

 母の理想としては、絵本を何冊か読み聞かせ、子守歌をうたってあげているうちに子はウトウト、「うふふ他愛ないわね、おやすみ」などと言いながらオデコにチュウして寝室を出る、つもりでした。実際私自身が母親にそうしてもらった記憶があるのです。
 でも私が寝かしつけいらずで夜泣きなど一度もない赤ん坊だったらしいのに対し、息子は生まれてこのかた寝ない子泣く子、授乳していた頃より夜泣きの頻度は減ったとはいえ、一晩通して寝ることは未だ滅多にない強者です。端っから同じ土俵に立てるわけなかったのです。

 風呂上がり、全力で逃げ回るすっぽんぽんを追い回しながら身体を拭き保湿剤を塗りたくりオムツとパジャマと腹巻を着せ水分補給させます。それだけでこっちはもう疲労困憊です。最後の力を振り絞ってやっと読み聞かせタイム。息子は絵本大好きなので、はじめのうちこそ神妙な顔をして聞いてくれます。でもしばらくすると「電気消す!」と訴えてきます(まだ話せないので電気を指差して「ん!ん!」と言うだけですが)。
 そこで請われるままに抱っこして電気の紐を引っ張らせてやります。部屋を照らすは豆電球ひとつ。さあ、悪夢の始まりです。

 暗闇に大興奮してウキャーッ!と絶叫しながら、母へ殴る蹴る頭突き馬乗りの連続、果ては凶器(積み木などですが)を持ち出されることもあります。よく「寝たふりして子どもが寝るのを待つ」と言うお母さんがいますが、どこから攻撃が飛んでくるか分からないので私には到底無理です。ここは布団と言う名の四角いジャングル。コーナーから飛んでくる敵をリングで寝そべって待つプロレスラーはこんな気持ちなのだろうか、と初めて思いました。とにかく怖いです。だってすごく痛いから!

 ある朝起きたら夫に「その顔の傷どうしたの?」と驚かれました。鏡で見てみると大きな引っ掻き傷。前夜の戦いの爪痕です。文字通り爪でやられたに違いありません。向こうは怪我してもあっという間に綺麗に治るけれど、こっちはどんな小さい傷でも色素沈着に怯えなきゃいけないんですよ!

 ただでさえ汗かきの幼児、せっかくの風呂上がりがすぐに汗だくになります。これを1時間ばかり続けてやっと電池切れして寝るのです。そこからそーっと寝室を抜け出して、冷蔵庫から取り出した本搾りを開ける瞬間、生きてて良かったと心の底から思います……。

 でも寝付いて1時間くらいで泣きながら突然寝室から飛び出してくることもあるのでまだまだ気が抜けません。プロレスしなくても寝てくれる日なんて、本当に来るのかしら。

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 散歩中に出会った黒猫さん。息子に追い詰められて壁の穴の中。ごめんよ。