男の子がわからない

私は男の子の母親だけれど、もし産んだのが女の子だったら同じような悩みを抱えていたに違いない。

二人姉妹の妹として生まれた私は、男児を切望していた父親の命により、小さい頃はいつも男物の服ばかり着せられ、髪を伸ばすことも許されず、毎朝剣道と空手の稽古、とにかく男らしく強くあることを強要された。

プロレスラーの長与千種は小学6年生くらいまで自身を男だと思い込んでいたらしい。私の父親はそれを鵜呑みにして自分の娘も同じように育てられると信じていたようだ。でも所詮彼女とは土台から何もかも違うわけで、武道は何一つ上達しないまま、代わりに「女らしさ」の欠片もない、ガラの悪いだけのポンコツ女として私は成長した。

自分の妊娠した子が男の子だと分かったとき、自分はあれほど「男らしくあれ」と育てられたのだから、少しくらいは男の子の気持ちに寄り添って育てられるんじゃないかと思っていた。

産んでみたら男の子の気持ちなんてまるっっっっっきりわからないんだなこれが!!!

田房さんの漫画にあるように「男の子はバカで可愛い」というステレオタイプな見方があるけれど、反面傷つきやすくキレやすい、と男の子のお母さんたちは言う。個人差もあることだが、言葉の発達が女の子に比べて遅く、意見や不満をなかなか上手に説明できないのも理由のひとつかと思う。毎日が「えっ?そこでキレちゃう?」の連続だ。息子に泣きながら「ママいらな〜いバイバ〜イ」と言われると途方に暮れてしまう。

考えてみたら男兄弟のなかった私にとって、男というものは単なる未知の生物でしかない。毎日が未知との遭遇。それでも自分には女としてのジェンダーもまともに育ってないのと同時に男のこともちっとも分かっていないということが理解できたのは大きな収穫だった。一から人間やり直しのつもりで、息子の胸を借りて頑張っていくしかない。つくづくポンコツな母ちゃんでごめんね。

現在3歳の息子は1歳半くらいからバスに興味を持ち始め、その後順調に工事車両にのめり込み、きかんしゃトーマスウルトラマンを愛し、トミカプラレールを一列に並べて悦に入り、新幹線の中では青いからかがやきが好きだという。

「男の子でももし車に興味を示さなくて、お人形やぬいぐるみを好む子だったら、自分が子どものころ買ってもらえなかったシルバニアファミリーで一緒に遊びたいなあ」というお母ちゃんのささやかな夢は音を立てて崩れ去った。ほっといてもちゃんと「男の子らしく」成長している。すごいな。おかげでこちらは夫よりずっと新幹線の種類に詳しくなった。

私は赤が着られない、と以前書いたけれど、

息子は何も教えずとも青を愛するようになり、青ばかり着ている母と現在対立している。「ぼくはあおがすき、だからママはあか」「ママも青が好きなんだもん。青がいいな」「ダメー!」なんなんだこの不毛な争いは。

知り合いのフランス人に「男の子ってたいてい青が好きだよね」と言ったら「そんなことない。男の子だからって親がステレオタイプに青をすすめたり着せたりするからだよ」と答えられ、いやいや服もおもちゃも満遍なくいろんな色を選んだのに自然とそうなったんだよ!あなたの意見こそステレオタイプな物言いだよ!と説明したかったのにうまく伝わらなかった。こういうことが的確に言えるようになるまで頑張ろうフランス語。

子どもが聴いてくれる話し方と子どもが話してくれる聴き方 大全

子どもが聴いてくれる話し方と子どもが話してくれる聴き方 大全

なるべくキレられずに息子と対話できるようにこの本で勉強中。「私は実際に子どもをもつまでは、すばらしい親でした」この出だしがいいなー。かつては私もそうだったから。こてんぱんに打ちのめされ続けて、でもどうにかこうにか生きのびて今日に至っている。明日は明日こそは心穏やかに過ごせますように(昨日も一昨日もそう思った)。