2016年度仏検準1級二次試験、そして「この世界の片隅に」

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日曜日。良く晴れて風がないので暖かい。お馴染みのアテネフランセで二次試験を受けてきた。

待合室で呼ばれて試験室の前まで行って着席。試験開始3分前に問題文を渡された。

A 過労死についてどう考えるか。
B 食品を買うときに何に気をつけるか。

Aは電通の件からだろうけれど3分でまとめるのは難しいと判断した。毎日の買い物について自分の考え方を述べようとBを選択。

呼ばれて試験室へ。試験官はフランス人女性と日本人男性。まずは3分間のエクスポゼ。課題は易しいほうのはずなのに、思うように言葉が出てこない。気をつけるのはまず価格、家の経済を管理しなければならないので。それから食品の産地。4歳の息子がいるのでバランスよくいろいろ食べさせたい。好き嫌いが多いので難しいが努力している。近くに都合のよいスーパーがあるので重宝している…などということをしどろもどろ話した。文法も何もあったもんじゃなかったと思う。振り返れば生協の仕組みのこととか、もっと話すべきことはあったのに。

マダムから「産地に気をつけるということですが、具体的に何の食品についてですか?」と質問される。
私「特に野菜についてです」
マ「どこのものを選びますか」
私「なるべく国産を選ぶようにしています。◯◯産のものは買いません」
マ「なぜですか」
私「たくさん化学薬品が使われているからです」
マ「国産のものは使われていないのですか?」
私「いいえ。でも薬品の質と量に大きな違いがあります!」
具体的に説明できないのに力説。どれだけ彼の国を攻撃したいんだ…。

マダムからさらに質問。「輸入の際、繰り返す空輸による環境への影響をどう考えますか」難しい!ふたたびしどろもどろしているうちに時間切れ。とんちんかんで意味不明なことを言ってしまったと思う。対策としてはやはり国内自給率を上げて輸入を減らす必要がある、と言いたかったのだが…。

ともかく沈黙は避けられたけれど納得いく出来ではなくて落ち込む。準2級も2級も二次はそれなりに手ごたえを感じたけれど今回はそれがまったくない。はあああ打ちのめされたなあ。そして相変わらず話すのが一番苦手だということを痛感した。また一から出直そう。


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打ちのめされついでにずっと観そびれていた「この世界の片隅に」を観に丸の内TOEIへ行く。満席、しかも客層の半分以上が年配者、こんな映画は初めてかもしれない。

昔からこうの史代がとても好きで読み続けている。あのふんわり柔らかい絵が映画でどう表現されるのか、どきどきした。

素晴らしかった、などという言葉が空虚に感じられてしまうほど圧倒的だった。何もかも本当に本当によかったけれど、特に音が凄かった。爆音が。空襲はきっとあんな風に心と身体を一瞬にして八つ裂きにしたのだろう。のんさんの声はすずさんそのもので、のんさんの声だってことを一瞬で忘れた。こうのさんの描く女性の特徴的なくねっとしたハニカミ、あれを声だけで見事に表現していた。

確かにあの2時間だけ、有楽町の映画館の片隅で、私は広島を、呉を、笑ったり泣いたりしながら、すずさんと一緒に生きていた。

映画館を出たら有楽町駅の上を、息子の大好きな新幹線の700系が走っていった。帰ったらすぐあの子を抱きしめたい。生きている、そのなんとありがたくて尊いことか。それを思い出させてくれたこの作品に感謝したい。私は今日もまた、生きていける。