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私のヒーロー

日常

小1の図工の時間に紙人形を作らされた。女の子たちがネコやウサギやお姫さまを作る中、私は千代の富士を作った。横綱昇進前の、青い締込みの千代の富士。物心つく前からずっと相撲を観ていたと思うけれど、あんなにかっこいい力士は他にいなかった。子どもの心にも強烈な印象を残したんだと思う。

男の子たちがその工作で何を作ったのか記憶にないけれどウルトラマンもいたんだろうな。この間録画したウルトラマン誕生50周年の特番で「あなたのヒーローは誰ですか」という問いかけがあった。夫と息子(3歳)にとっては間違いなくウルトラセブンだろう。「私のヒーローは千代の富士以外ないよ」そう夫と話しながら番組を観ていた。まさかその数日後に亡くなってしまうなんて。癌で闘病中とは知っていたけれど、あまりに早すぎた。

息子は白鵬びいきだ。場所中は「はくほうつよい!かっこいい!」と繰り返している。確かにあの他の追随を許さない強さは尋常じゃない。私にとっての千代の富士以上に強い印象を息子に焼き付けているのかもしれない。私は白鵬についてはなんだかんだ思うところもあるけれど、子どものころ父親にさんざん千代の富士の悪口を言われて辛かった経験があるので、それを息子には決して言わないようにしている。「お母さんは鶴竜のほうが好き〜」と言うだけである。
白鵬が息子の中で後年どんな存在になっていくか、けっこう楽しみにしている。千代の富士が唯一のヒーローだった私と違って、息子にはウルトラヒーローやきかんしゃトーマスのゴードン、いろいろなお気に入りがいるのでもしかしたら相撲のことなんてあっさり忘れてしまうかもしれないけれど。

今から5年ほど前、夫と出かけた初場所国技館のロビーで千代の富士を見かけた。憧れの人が目の前に突然現れたので固まる私だったが夫に促されて握手してもらった。その時親方はカレンダーの宣伝をしていて「カレンダー買ってよね」と言いながら手を握ってくれた。大きくてとてもあたたかい手だった。私は末端冷え性のため冬場は氷のように冷たい手をしており、申し訳ない気持ちでいっぱいになったことを覚えている。子どもの頃からのいろいろな思いを伝えたかったのに思い入れがあまりに強すぎて、ただ一言握手のお礼を言うことしかできなかった。

横綱は私のたったひとりのヒーローです。今までも、そしてこれからも、ずっと。

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