イエラ・マリ展 ー字のない絵本の世界ー

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板橋区立美術館で催されているイエラ・マリ展(http://www.itabashiartmuseum.jp/exhibition/ex141122.html)に駆け込みで行って来た。素晴らしかった。

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イエラ・マリは1931年生まれで昨年亡くなったイタリアの絵本作家。遺した作品はたった8冊と寡作ながら、そのどれもが無駄のないシンプルな描線と色彩で構成されている。余白まで美しい。絵本でありながら漂う緊張感に息を呑む。これがすべて手仕事だなんて今となっては信じられない。神業とはこういうことなのだろう。精緻な描写力には伊藤若冲に近いものも感じた。

描かれるテーマは一貫して生命の営みと変化していく形の有り様。言葉はなくともその分かりやすさと美しさで子どもはもちろん大人も惹き込まれる。

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美術学校で学んでいた当時は「自分は画家にならないだろう」と思っていたイエラが、結婚し子育てをしながら絵本作りに取り組み始めた理由は「子どもに見せるのに気に入った絵本がなかったから」。

私はこれから息子に何を見せてやれるだろう。

交通の便の悪さを毎度嘆きたくなる板橋区立美術館だけれど、彼女の作品を観たらそんなこと何でもないと思えた。機会を逃さなくて本当に良かった。

展示は明日1/12まで。(ロビーのみ撮影可能)