幸せそうな人

大相撲中継Eテレの幼児番組以外、ほとんどテレビをつけない暮らしが2年ほど続いてるのですが(「マッサン」とか「深夜食堂」とか人形劇「シャーロックホームズ」などは録画してこっそり観てます)、この間偶然目にした育児番組の番宣で「育児のストレスの原因の多くが夫への不満である」と語られていたので見入ってしまいました。

育児は本当に大変ですが、夫が原因でどうこうということは、今の私にはほとんどありません。たしかに息子が産まれたばかりの頃は、朝から晩まで泣いてばかりの赤ん坊とずーっと二人きりの暮らしが辛すぎて、早朝出勤&深夜帰宅の夫と衝突することもありましたが、そこから2年近くが経ち、いろいろ諦めた末現在に至ります。息子の暴れっぷり以外、日々の暮らしは穏やかなものです。

それに、夫はかつて私が一番辛かった時期も、一日中目を三角にしていた私から逃げずに正面から向き合っていてくれていた人なので、いろいろあっても私にとってはずっと同志であり戦友であり続けるのだろうという気持ちでいます。息子を無事に育て上げることと同じくらい、夫と楽しく暮らしていくことは私にとって大きな大きな命題です。

かと言って夫に全く不満がないわけではありません。まず肉を食べすぎます。外食で注文を任せるとテーブルは肉だらけになり、家でもどっさり肉料理を作ったつもりでも、あっという間に無くなってしまいます。おかげでうちの冷蔵庫はいつも空っぽです。息子が食べ盛りになる頃は、フランス人のように肉をキロ単位で買わないと追いつかないのではないかと震え上がっています。

そして人の話を全然聞いてません。予定をメールしてもカレンダーに書いても視界には入らないらしいです。これまでずっとなんとかならないものかと悩んでいたのですが、先日夫の祖母に会いに行ったとき、おばあちゃんが夫を「まったくあんたは人の話を聞かない!」と叱ってたので、ああこれは死ななきゃ治らないパターンね〜ときっぱり諦めることにしました。

以前、外国暮らしから久しぶりに一時帰国した友だちに「旦那さんの写真見せて」と言われたのでiPhoneのアルバムを見せたところ「なんか、幸せそうな人だねえ」と言われて「動物のお医者さん」のスナネズミか!と笑ったのですが、その友だちは人生の半分近くをイギリスで過ごしているので、ほぼイギリス人の感覚で見たまま素直な感想を言ったのだと思います。案外的を射ているのかもしれません。

夫はとても穏やかな人で、私に対して不機嫌な表情を見せることはまずありません。仕事で辛いこともたくさんあるだろうに、愚痴も不満も一切こぼさない。家では何事も「良きに計らえ」と私に任せます。そして確かにいつも幸せそうです。「人間の最大の罪は不機嫌である」なら、私は獄門ですが彼が罪に問われることは絶対にないだろうなあと思います。

ドラマ「カーネーション」でヒロイン糸子の夫の勝さんは「いつも上機嫌」な人で、糸子とおばあちゃんをびっくりさせますが、私は糸子たちの気持ちがすごくよく分かります。それまで情緒不安定な家族の顔色をうかがいながら暮らしていた者にとって、毎日幸せそうに暮らせる人間とは宇宙人のようなものです。でもそんな人となら、自分たちも家の中でいつも寛いだ気持ちでいられます。それは、何ものにも代えがたい幸福なことです。

夫は勝さんのように陽気なタイプではありませんが、かといって陰気なわけではない、とにかくいつも穏やかな、夕凪のような人です。願わくはこの性質を息子に受け継いで欲しいなあと思っています。穏やかさはしなやかさ、芯の強さに繋がっていると思うのです。

そんな夫は今月4日で無事に誕生日を迎えることができました。40歳おめでとう。できれば肉は控えめに、たまにはカレンダーを見てもらえると妻は嬉しいです。



スナネズミはいつも幸せそう♡