菱田春草展@東京国立近代美術館

 菱田春草展に行ってきた。会期末近くの週末ということもあり、入口のグッズ売場が大混雑でウヘェとなったけれど、館内はぎゅうぎゅうと言うほどではなく、比較的ゆっくり観ることができた。

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 春草について今まで黒猫の画家、という認識くらいしかなかったのだけど本当に素晴らしかった!享年36と早世の画家なのに、ものすごい作品量(しかも前期と後期で入れ替えまである)。描いて描いて描いて、ひたすら描きまくった人なのだ。

 東京美術学校卒業制作の「寡婦と孤児」(「作風が暗すぎる」との理由で落第の憂き目に遭うところを校長の岡倉天心の鶴の一声で最優秀賞に輝いたといういわくつきの作品)を前に、同じく育児中の友人と「赤ん坊のぐんにゃり感!このぐんにゃり感!」と盛り上がった。手法は伝統的な日本画なのに、赤子の息遣いが伝わるほど生々しい。

 何よりも、数多く描かれた朝焼けや夕暮れの空気感と光の表現に息をのんだ。暮れて少しずつ下がってゆく気温まで肌に沁みてくるようだ。それらのすべてに使われているのは印象的な深い青色。当時批判されたという「朦朧体」だが、人を惑わす魔力がある。吸い込まれる。

 緻密で繊細な植物画にも圧倒されたし、猫たちはもちろん鹿も可愛かったけれど、今回この風景画群に心奪われてしまった。ああ、前期も観てみたかった(「落葉」は前期のみの展示だった)。

 息子へのお土産に黒猫のマスコットを買おうと長蛇の列に並びかけたらなんと売切!残念……。いつか一緒に本物を観に行こう。