種村季弘の眼 迷宮の美術家たち

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 板橋区立美術館で開催中の種村季弘展に行ってきました。

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 鰯の頭がたくさんついた帽子をかぶっていらっしゃる。信心からということでしょうか。彼が池袋出身とは知りませんでした。

 種村さんは日本のマニエリスムブームの火付け役と言われていますが、王道を外れた面白いものや怪しいものを発掘する名人だったと思います。贋物、エロティシズム、錬金術、吸血鬼etc……

 高校生のころ澁澤龍彦稲垣足穂とあわせてよく読んでいたこともあって、昔の自分に会いに行ったような、なんとも言えないむず痒さを感じてしまいました。

 10代のころは惹かれてやまなかったゾンネンシュターンの狂気を目の前にして、今はちょっと距離を置きたいなと思ってしまったのは、やっぱり人の親になってしまったからでしょうか。うむむ。

 それでも宝石よりガラス玉に心動かされる性質なので、すごく面白い展示でした。鈴木慶則の「高橋由一風鮭」にはしてやられてしまったし、フォーゲラーの美しいエッチングにときめきました。

 でも今回の展示で一番良かったのは種村さん宛に書かれた書簡の数々で、澁澤龍彦稲垣足穂瀧口修造吉行淳之介武田百合子など、錚々たる作家陣からの葉書や手紙は読み応えありました。それぞれの文字に人となりを見ることができます。武田百合子からのものは新聞の書評へのお礼状だったのですが、短い中に喜びと感謝の気持ちがぎゅっと込められた誠実な手紙で、素敵でした。こんなふうにさらりと書けたらいいなあ。憧れます。

 展示は来月19日まで。10月4日は巖谷國士さんの講演があって、本当はこの日に行きたかったのですがかなわず。幼児持ちの辛いところ……。

 次回の板橋区立美術館は「イエラ・マリの絵本展」ポスターで見ただけですがグラフィックアートのようで素敵でした。これはぜひ息子と行ってみたいです。