楽園ワルツ
南へ行こう 雪を知らない国へ
夢のさめぎわ そっとくぐり抜けて
水面漂う三日月に乗り込み
太陽に愛でられた島へ向かうよ
秘密の果実を頬張る君の
黒い乱れ髪金色にこぼれてゆく
僕はもう何もいらないよ
君の中で骨になれるのなら
差し伸べた手に手を重ね合わせて
溶けるように流れて行けたら
海鳥の目で空を仰ぐ君と
僕は一目で恋に落ちてしまった
胸に残った小さな火傷のあと
広がって僕の身体焼き尽くしてゆく
夕凪に羽ばたけずに僕らは
ひとしずくの言葉で漂う恋人
僕はもう何も言わないよ
君の歌で眠りにつけるのなら
行く先はふたりにも分からないから
その声をたよりにして行きましょう
天使のワルツが始まる
戻れないふたりもその中に消えて行く
僕はもう何もいらないよ
君の中で骨になれるのなら
薔薇色に燃えるあの海の底へ
抱き合った眩暈の中沈んで行けたら
(1999)