『つづきのねこ』吉田稔美

 現在1歳3ヶ月の息子に毎日絵本を読み聞かせをしています。数ある絵本の中でも『つづきのねこ』はいつか彼に読んで欲しい大切な一冊です。これは私が読み聞かせるのではなく、大きくなってから自分で読み、自分で大切なことを感じ取って欲しいと願っています。

 講談社版では鮮やかで美しい挿絵が描かれている本作ですが、元々は私家版で、前進する一匹の猫のシルエットだけが描かれていました。読み手は今まで暮らしてきたあの猫やこの猫を自然と当てはめて読むことになります。

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 物語は実話をもとに描かれています。可愛がっていた黒猫を亡くし、深い悲しみにくれていた作者の元に、数年後、死んだ黒猫そっくりの猫があらわれます。そっくりなのは姿かたちだけではありません。目が見えずてんかん持ちなところも同じ、更に教えたことまで何もかも覚えているのでした。この不思議な出会いに、あのねこがけんめいにかえってきたのだ、と作者は思います。

 我が家の猫は今年10歳になります。息子とはとても仲良しで、まるできょうだいのように過ごしています。今は健康そのもので、多くの家猫と同じように、さほど年齢を感じさせません。でも、どんなに長生きしても、間違いなく息子が大人になる前に、猫はこの世を去ることになります(絵本の言葉を借りれば「ねこの時計はすばやくすすむ」)。いつか必ずやって来る別れを息子とどう迎えるか。考えたくはないけれど、避けられない問題です。

 『つづきのねこ』は、たとえ永遠に別れても、いのちはめぐり続いていくものだと教えてくれて、読み返すたびにじんとさせられます。息子にはこの感覚を知る人に育って欲しいです。それはいつか必ず、彼を支えてくれる大きな力になると思うから。

 一度でも動物と暮らしたことがある人なら共感できるメッセージがたくさん散りばめられているこの作品を、今買うことができないのがつくづく残念です。ぜひ再販して欲しい、素敵な絵本です。

つづきのねこ

つづきのねこ



今週のお題特別編「素敵な絵本」