空を越えて

空を越えて ぼくは行く
サカナになった きみを追いかけ
 
水鏡で紅をひいて
春の嵐が吹き荒れるのを
頬杖ついて待たずに
 
真昼に咲いた白い月を
鞄の中に詰め込むために
きみは駆けて行った
 
抱き締められてた 花を手折る夜には
移ろいやすいきみの瞼を七色に染めよう
 
空を越えて ぼくは行く
サカナになった きみを追いかけ
 
遠き彼方の夜に耳をそばだてれば
 
くちびるはなびら すべてがまばゆい
はかなく揺れるかげろうみたいに
きみは踊るよ
 
夢見たあの日は 真夏のモザイク
誰も知らない波間のどこかにきみの隠れ家
 
海に遠く きみは行く
象牙の砂漠と群青の夜へ
 
空を越えて ぼくは行く
サカナになった きみを追いかけ
 
 
(1996)